副業する時間がない人へ|意向27.6%時代に時給単価を上げる5ステップ
「副業に興味はあるのですが、本業が忙しくて手が回りません」
「土日は疲れて寝てしまい、気づくと月曜の朝になっています」
「やってみたい気持ちはあるのに、これ以上足せる時間が1分もありません」
——データ分析とWebマーケティングの支援を、会社員として働きながら続けてきた現場で、こうしたお話を数多く伺ってきました。
公益財団法人日本生産性本部の第19回 働く人の意識に関する調査に、気になる数字があります。2026年7月6〜7日に、雇用者1,100名を対象として実施された調査です。
「現在は行っていないが、将来的には兼業・副業を行ってみたい」と答えた人が、27.6%でした。「現在、兼業・副業を行っている」9.1%と足しても、36.7%にとどまります。
同じ調査の2020年10月時点では、この2つの合計は50.6%でした。6年で14ポイント近く縮んだことになります。
一方で、「兼業・副業を行う気はない」は63.3%です。働く人の3人に2人が、副業を選択肢から外している計算になります。
不思議なのは、環境のほうは整ってきていることです。パーソル総合研究所の第四回 副業の実態・意識に関する定量調査(2025年8月実施)を見てみます。企業の副業容認率は64.3%で、過去最高を更新しました。
つまり、いま副業を止めているのは会社ではありません。働き手の側の「時間がない」という実感です。
筆者自身、かつては毎日が終電帰りでした。会社に泊まることもありました。治療のために時間を空ける必要があった時期もありました。
当時の自分に副業の話をしても、鼻で笑って終わりだったでしょう。
それでもいまは、限られた時間のなかで、時給単価の高い案件を回せるようになりました。
本記事では、副業を始める前に踏むべき5つのステップを解説します。

本記事のターゲット
- 副業に興味はあるが、平日は終電・休日は疲労回復で終わり、着手する余力がない方
- 自分の担当業務とマネジメントを両方抱え、部下より遅くまで残っている方
- 使える時間が限られており、時間あたりの効率を上げるしかないと感じている方
データで見る:副業「意向」の減少と、その正体
まず、いま何が起きているのかを数字で確認します。
6年間で何が変わったか
日本生産性本部は2020年7月調査から、同じ設問で兼業・副業の実施意向を追い続けています。推移は次のとおりです。

| 調査時点 | 現在行っている | 将来的には行ってみたい | 合計 | 行う気はない |
|---|---|---|---|---|
| 2020年7月 | 8.7% | 40.2% | 48.9% | 51.1% |
| 2020年10月 | 10.0% | 40.6% | 50.6% | 49.4% |
| 2021年4月 | 9.9% | 38.9% | 48.8% | 51.2% |
| 2023年1月 | 7.4% | 39.8% | 47.2% | 52.8% |
| 2024年7月 | 8.7% | 27.7% | 36.4% | 63.5% |
| 2026年1月 | 7.5% | 23.3% | 30.8% | 69.2% |
| 2026年7月 | 9.1% | 27.6% | 36.7% | 63.3% |
読み取れることが2つあります。
ひとつは、下がったのは「将来的には行ってみたい」だけだという点です。2023年1月の39.8%から、直近は27.6%まで落ちています。
もうひとつは、直近では下げ止まっているという点です。2026年1月の23.3%から27.6%へ戻り、「行う気はない」は69.2%から63.3%へと統計的に有意に減少しました。
つまり「副業離れが一直線に進んでいる」わけではありません。コロナ禍で膨らんだ意向が元の水準へ戻り、そこから改めて動き始めているという見方のほうが実態に近いといえます。
実際にやっている人は、むしろ増えている
意向が減った一方で、実施している人は増えています。ここが今回いちばん重要なポイントです。
| 指標 | 直近の値 | 出典・調査時点 |
|---|---|---|
| 正社員の副業実施率 | 11.0%(前回比+4.0pt・過去最高) | パーソル総合研究所 第四回(2025年8月) |
| 企業の副業容認率 | 64.3%(+3.4pt・過去最高) | 同上 |
| 企業の副業人材の受入率 | 29.1%(+4.7pt・過去最高) | 同上 |
| 正社員の兼業・副業実施率 | 10.7%(2020年9.8%から微増) | 兼業・副業に関する動向調査2024(2025年1月) |
「やりたい人」は減り、「やっている人」は過去最高。この2つは矛盾していません。関心が薄く広がっていた層が抜け、実行できる条件がそろった層が残ったという構図です。
問題は、抜けていった層に「やりたかったが、できなかった人」がかなり含まれていることです。
止めているのは、ほとんど時間
では、意向がありながら実施に至らない理由は何か。パーソル総合研究所の第三回調査が、副業意向者1,170名に直接尋ねています。
| 副業を行っていない理由 | 割合 |
|---|---|
| 自分の希望やスキルに合っておらず、応募を控えてしまう | 29.7% |
| 本業が忙しく時間が無い | 29.7% |
| プライベートが忙しく時間が無い | 20.9% |
| 副業の探し方がわからない | 18.9% |
| 会社で副業が禁止されている | 12.0% |
| 会社が副業に消極的で、実施しにくい | 9.9% |
「会社で副業が禁止されている」は12.0%にすぎません。制度の壁は、もう主因ではないのです。
上位に並ぶのは、本業とプライベートの時間です。この2つを足すと、他のどの理由よりも大きくなります。
時間が戻らない構造的な理由
なぜ時間が足りなくなったのか。ひとつの説明が、同じ日本生産性本部の調査にあります。テレワーク実施率の推移です。
| 調査時点 | テレワーク実施率 |
|---|---|
| 2020年5月 | 31.5% |
| 2022年1月 | 18.5% |
| 2024年7月 | 16.3% |
| 2026年7月 | 14.5%(過去最低) |
2020年に副業意向が50%を超えたのは、偶然ではありません。通勤が消え、拘束が緩み、可処分時間が物理的に増えた時期だったからです。
その時間はいま、元に戻りつつあります。意向だけが2020年の水準にとどまるはずがありません。
全体像:時間を生み出す5ステップ
副業を「もう1つ仕事を足すこと」と考えると、必ず行き詰まります。足す前に、引くところから始めます。

| ステップ | やること | 期間の目安 | 出てくるもの |
|---|---|---|---|
| Step1 測る | 年収と労働時間から時給単価を算出する | 1日 | 現在地の数値1つ |
| Step2 削る | 業務の棚卸しと、なくす・自動化する判断 | 1〜2ヶ月 | 週あたり数時間の余白 |
| Step3 配る | 業務分担の見直し、上司へのアラート | 1〜3ヶ月 | 担当範囲の合意 |
| Step4 変える | 転職活動(Step2・3で動かなかった場合のみ) | 3〜6ヶ月 | 労働時間の前提が変わった状態 |
| Step5 充てる | 副業案件の選定と単価交渉 | 1〜3ヶ月 | 月10〜20時間の高単価案件 |

Step4は全員に必要な工程ではありません。Step2とStep3で余白が生まれるなら、そこで止めて構いません。順番に試して、動かなかったときの選択肢と考えてください
Step1:年収ではなく「時給単価」で現在地を測る
まずは自分自身の現在地を知るために、自らを定量的に計測してみましょう。
なぜ年収では判断を誤るのか
年収は「いくらもらったか」しか表しません。そのために何時間を要したかが抜け落ちてしまします。
計算式はとても簡単です。
本業の時給単価 = 年収 ÷ 年間総労働時間
年間総労働時間 =(月間所定労働時間 + 月間残業時間)× 12
所定を月160時間(1日8時間×20日)とすると、残業が月100時間の人の年間総労働時間は3,120時間になります。
3つのケースで比べてみる
「終電帰り」「定時退社への転職(年収下がる)」「定時退社への転職(年収維持)」の3ケースで比較して見ましょう。

| ケース | 本業年収 | 月間残業 | 年間総労働時間 | 本業の時給単価 |
|---|---|---|---|---|
| A:終電帰りの現状 | 1,000万円 | 100時間 | 3,120時間 | 3,205円 |
| B:定時退社へ転職(年収は下がる) | 900万円 | 0時間 | 1,920時間 | 4,688円 |
| C:定時退社へ転職(年収を維持) | 1,000万円 | 0時間 | 1,920時間 | 5,208円 |
年収1,000万円という数字だけを見れば、AはBより100万円多く稼いでいます。
しかし時給単価で見ると、AはBより1,483円も低いのです。年間1,200時間、月にして100時間の残業に伴って、単価を下げている計算になります。
現場で見た例
筆者がコンサルティングファームに勤めていた頃は、まさにケースAの状態でした。朝は早めに出社し、定時を過ぎてから打ち合わせが始まり、そのあと会食、帰宅は終電。会社に泊まる日もありました。
当時は「年収が上がっているのだから問題ない」と考えていました。時給単価を計算してみたのは、ずっとあとのことです。
出てきた数字は3,000円台前半でした。同じ職種の副業案件の相場より低かったのです。この1つの数値が、その後の判断をすべて変えました。

まず、いまの年収と月間残業時間を式に入れてみてください。作業は5分で終わります。3,000円台なら、次のStep2へ進む理由が十分にあります。
Step2:本業の業務そのものを削る
現在地が出たら、次は削る作業です。
汗水垂らして頑張って早く終わらせる話ではありません。業務の量そのものを減らす話です。
削り方は3つしかない

| 削り方 | 中身 | 向いている業務 |
|---|---|---|
| なくす | やめる、頻度を落とす、範囲を狭める | 定例会議、二重の報告、誰も読まない資料 |
| 自動化する | 仕組みやツールに任せる | 定型のレポート作成、データの転記、集計 |
| 短くする | 手数と待ち時間を減らす | 承認フロー、資料のレビュー往復、探しもの |
効果が大きい順は、上から下です。ところが多くの現場では、いちばん下の「短くする」から手をつけてしまいます。
会議の資料を効率よく作る前に、その会議が必要かを疑ってください。順番を守るだけで、削れる時間の桁が変わります。
自動化の判断基準
自動化は魔法ではありません。手をつける前に、次の3つを確かめます。
- 月に3時間以上かかっている(少ない作業は自動化のほうが高くつきます)
- 手順が毎回ほぼ同じである(例外だらけの業務は自動化に向きません)
- 間違えたときに気づける(気づけない自動化は、静かに事故を起こします)
3つとも当てはまる業務から着手します。生成AIや業務システムを使うかどうかは、この判断のあとで決めることです。
削った時間が、また埋まる問題
「効率化して余裕ができた人」は、周囲から「もう少し頼めそうな人」に見えます。悪意はありません。自然にそうなります。
対策は1つだけです。空いた時間の使い道を、空く前に決めておくこと。
| 埋まり方 | 起きること | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 新しい仕事が来る | 削った分がそのまま戻る | 「この時間は◯◯に使う」と自分の予定表に先に入れる |
| 自分で仕事を増やす | 完成度を上げすぎて時間を使う | 提出物の合格ラインを事前に決める |
| 周囲の残業に合わせる | 帰りづらくて席にいる | 週2日、退社時刻を宣言する |
いちばん確実なのは、カレンダーに先に予定を入れてしまうことです。空白は必ず埋められますが、埋まっている枠はそう簡単には奪われません。
Step3:抱えている仕事を、上司と部下に配る
Step2で削っても足りない場合、次に疑うのは業務の量ではなく配分です。
プレイングマネージャーの罠
マネジメントの立場にある方ほど、この状態に陥ります。次のうち2つ以上当てはまるなら、配分の問題だと考えてください。
| 兆候 | 現場で起きていること |
|---|---|
| 部下より遅くまで残っている | 自分の担当業務を、日中のマネジメント時間の後ろに積んでいる |
| 「自分でやったほうが早い」が口癖 | 教える時間を惜しんで、永続的に自分の時間を差し出している |
| 休むと業務が止まる | 引き継ぎ可能な形になっておらず、属人化している |
| 緊急の相談で1日が終わる | 判断のボトルネックが自分1人に集中している |
「自分でやったほうが早い」は、短期的には正しく、長期的にはほぼ確実に誤りです。1回の指導に3時間かけても、月2時間の作業なら2ヶ月で元が取れます。
上司へのアラートは、状態ではなく数字で出す
「忙しいです」は、残念ながらほとんど通じません。全員が忙しいからです。伝え方を変えます。
| 伝え方 | 例 | 上司側の受け取り |
|---|---|---|
| 悪い | 「最近ずっと忙しくて余裕がありません」 | 主観の申告。判断できない |
| 悪い | 「このままだと倒れます」 | 感情の問題として処理されやすい |
| 良い | 「今月の残業は80時間で、内訳はA案件40時間・B案件30時間です」 | 事実。配分の議論に入れる |
| 良い | 「C案件を受けるなら、A案件の納期を2週間延ばす必要があります」 | 選択肢。上司が決められる |
要点は、上司に「決めてもらう形」で持っていくことです。相談ではなく、選択肢の提示にします。
委譲は3段階で進める
いきなり丸ごと渡すと、たいてい戻ってきます。段階を踏みます。
- 見せる — 自分がやるところを1回見てもらい、判断の理由を口に出して説明する
- 一緒にやる — 相手にやってもらい、詰まったところだけ引き取る
- 任せて確認する — 完全に任せ、結果だけを決めた頻度で確認する
3段階目に入るまでは、自分の時間はむしろ増えます。ここで挫折する人が多いのですが、2ヶ月耐えれば構造が変わります。
Step4:構造が動かないなら、転職で器ごと入れ替える
Step2とStep3を3ヶ月試して、時間が1分も生まれないことがあります。少数精鋭で全員が抱えきっている職場では、珍しくありません。
その場合は、個人の工夫では動きません。器そのものを入れ替える、つまり転職を検討する段階です。
転職を検討してよい3つの条件
| 条件 | 判断の目安 |
|---|---|
| 時間の構造が個人では動かない | Step2・3を3ヶ月試しても、週あたりの労働時間が減らなかった |
| いまの会社で成果を出せている | 評価されている状態での転職は、条件交渉が有利に働く |
| 時給単価が相場を下回っている | Step1で出した数値が、同職種の副業相場より低い |

逆に、成果が出ていない状態での転職は勧めません。時間の問題ではなく、業務の適合の問題である可能性があるからです。その場合は先に配置転換を相談してください。
「失いそうなもの」は、思ったより失われない
転職をためらう理由として、よく挙がるのが次の3つです。実際にはどうか、順に見ていきます。
| 心配ごと | 実際に起きること |
|---|---|
| 築いた人脈が切れる | 円満に退社した場合、関係はほぼ残ります。私の場合も前職の方と勉強会を行ったり、ビジネス相談を持ちかけることも多いです。 |
| 退職金が途切れる | 勤続年数によっては目減りしますが、転職先の年収差で回収できる範囲に収まることが多いと私の周囲でも聞きます。 |
| 年収が下がる | 下がる人もいますが、統計上は上がる人のほうが多くなっています(下記) |
3つ目については、公的統計があります。厚生労働省の令和6年 雇用動向調査から、転職入職者の賃金変動を引きます。
| 前職と比べた賃金 | 割合 |
|---|---|
| 増加 | 40.5%(うち1割以上の増加 29.4%) |
| 変わらない | 28.4% |
| 減少 | 29.4%(うち1割以上の減少 21.7%) |
「増加」が「減少」を11.1ポイント上回っています。前年からも、増加が3.3ポイント上昇し、減少が3.0ポイント低下しました。
年代別に見ると、30〜34歳で46.1%、35〜39歳で45.5%、40〜44歳で45.9%が増加しています。働き盛りの年代ほど、転職で賃金が上がりやすいという結果です。
転職で守るべき2つの条件
転職活動に入るとき、譲ってはいけない条件は2つだけです。
- 時間的な余裕が生まれること — 想定の月間残業時間を、面接で必ず数字として確認します
- 時給単価を下げないこと — 年収ではなく、Step1の式で比べます
年収そのものは、下がる場合があります。それでも構いません。Step1のケースBとCを、もう一度ご覧ください。
年収が900万円に下がっても、残業が消えれば時給単価は3,205円から4,688円へ上がります。下がったのは年収で、上がったのは単価と自由時間です。

ただし、年収が下がる転職は生活設計に直結します。住宅ローンや教育費の予定がある方は、下がった年収でも回るかを先に確認してから動いてください。次のStep5は、その差を埋める手段でもあります。
Step5:生まれた時間を、時給単価の高い副業に充てる
ここでようやく副業の話に入ります。Step1〜4を経た人は、月10〜20時間の余白を持っているはずです。
副業の相場を知る
パーソル総合研究所の第四回調査によると、副業の時給は平均3,617円・中央値2,083円でした。調査開始以降で最も高い水準です。
1ヶ月あたりの副業活動時間は、平均23.0時間でした。
この2つを掛け合わせると、月の副業収入の相場感が出ます。
| 月間の副業時間 | 時給2,083円(中央値) | 時給3,617円(平均値) | 時給5,000円 |
|---|---|---|---|
| 10時間 | 20,830円 | 36,170円 | 50,000円 |
| 20時間 | 41,660円 | 72,340円 | 100,000円 |
| 30時間 | 62,490円 | 108,510円 | 150,000円 |
平均と中央値が1.7倍も離れている点に注目してください。単価の分布が上に大きく伸びているということです。単価交渉の余地は、想像以上にあります。
転職+副業で、年収と時間はこう変わる
Step1のケースAとBに、副業を足してみます。

| 項目 | A:終電帰りの現状 | D:転職+副業(月20時間・時給5,000円) | 差 |
|---|---|---|---|
| 本業年収 | 1,000万円 | 900万円 | −100万円 |
| 副業年収 | 0円 | 120万円 | +120万円 |
| 合計年収 | 1,000万円 | 1,020万円 | +20万円 |
| 年間総労働時間 | 3,120時間 | 2,160時間 | −960時間 |
| 総合時給単価 | 3,205円 | 4,722円 | +1,517円 |
年収は20万円増え、年間の労働時間は960時間減ります。月にして80時間、1日にすると約4時間の余白です。
これがStep1〜4を先に踏む理由です。副業を足す前に本業を削っておくと、足した結果が「増える」ではなく「入れ替わる」になります。
逆に、削らずに足すとどうなるか
比較のため、転職せずに副業だけを足したケースも出しておきます。
| 項目 | E:転職せず副業だけ足す |
|---|---|
| 本業年収/月間残業 | 1,000万円/100時間 |
| 副業 | 月10時間×3,617円 |
| 合計年収 | 1,043.4万円 |
| 年間総労働時間 | 3,240時間 |
| 総合時給単価 | 3,220円 |
| 月間の残業+副業 | 110時間 |
年収は43万円増えますが、時給単価はほとんど動きません(3,205円→3,220円)。そして月110時間の時間外は、健康リスクの水準です。

この形は続きません。3ヶ月から半年で体調か家庭のどちらかが先に音を上げます。Step5だけを実行することは避けてください。
高い単価で受けるための3原則
同じ時間を使うなら、単価は高いに越したことはありません。3つだけ押さえます。
| 原則 | 中身 | 具体例 |
|---|---|---|
| 本業の隣で始める | いま持っているスキルの延長で受ける。学習コストがゼロになる | 広告運用の担当者が、中小企業の広告改善を受ける |
| 時間ではなく成果物で契約する | 「◯時間で◯円」ではなく「◯を納品して◯円」にする | 月次レポート一式、分析レポート1本、改善提案1本 |
| 最初に相場を伝える | 提示を待たず、こちらから単価の目安を出す | 「この規模なら月◯万円をいただいています」 |
2つ目が特に効きます。時間契約は、慣れて速くなるほど収入が減る仕組みです。成果物契約なら、習熟がそのまま単価上昇になります。
単価だけを追わない
一方で、単価がすべてではありません。パーソル総合研究所の第四回調査は、副業を行う理由の変化を報告しています。「収入補填」から「キャリア形成・自己実現」への移行です。
「副収入を得たい」「本業の収入だけでは不十分」といった収入面の理由は、前回調査より減りました。代わりに「副業で好きなことをやりたい」「自分のスキルが他の場所でも通用するか試したい」が上昇しています。
筆者の実感も近いところにあります。副業で得たものを並べると、次の3つでした。
- 収入源が増えたこと — 本業1本に依存しない状態は、判断を落ち着かせます
- 本業と違うドメインに挑戦できたこと — 業種も規模も違う現場を見ると、本業の常識が相対化されます
- 成果が形になり、評価につながったこと — 社外での実績が、結果として本業側の評価にも返ってきました
3つ目は狙って得たものではありません。ただ、外で通用することが確認できると、社内での提案の説得力が明らかに変わります。
副業を続けるための3つの守り
始めることより、続けるほうが難しいのが副業です。壊れる原因は、だいたい決まっています。
時間の上限を先に決める
パーソル総合研究所の第四回調査に、見過ごせない数字があります。
本業の残業と副業を合算して月45時間を超える人が3割を超えたのです。しかも、そのうち半数以上が本業先に副業を申告していません。同調査は、副業実施者の過重労働が調査開始以降で最も高い水準にあるとしています。
45時間は、健康障害リスクを考えるうえでの最初の警戒線です。上限は、始める前に決めてください。
| 守り | 決めること | 目安 |
|---|---|---|
| 時間の上限 | 本業の残業+副業の月間合計 | 45時間を超えない |
| 休む日 | 副業を一切やらない曜日 | 週1日以上を固定する |
| 撤退ライン | どうなったらやめるか | 体調・家庭・本業の評価のいずれかが崩れたら |
会社との関係を整える
| 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|
| 就業規則の副業規定 | 許可制か届出制か、禁止業種があるかを確認します |
| 競業避止の範囲 | 本業と競合する領域は、規定がなくてもトラブルになります |
| 労働時間の通算 | 雇用契約の副業は、本業と労働時間が通算されます |
| 秘密保持 | 本業で得た情報は、副業先では一切使えません |
厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを公表しています。労働時間の通算や健康管理の考え方が整理されているので、始める前に一度目を通しておくと安心です。
なお、業務委託で副業を行う場合も油断はできません。第四回調査は、業務委託の副業に「労働者性」の問題が顕在化していると指摘しています。契約は業務委託でも、実態として指揮命令を受けていれば、法的な扱いが変わる可能性があります。
時間の区切りが、満足度を決める
続けられるかどうかを分けるのは、意志の強さではなく設計です。これも調査に裏づけがあります。
兼業・副業に関する動向調査2024を見てみます。副業実施者620名について、生活全体の満足度が「向上した」割合を条件別に比較した調査です。
| 条件 | 当てはまる群 | 当てはまらない群 | 差 |
|---|---|---|---|
| 本業と副業・プライベートの時間を明確に区分し、時間管理ができている | 68.9% | 21.5% | 47.4pt |
| 副業で得た知識やスキルを本業の業務に還元することができている | 70.8% | 36.1% | 34.7pt |
| 本業の職場は副業に対して寛容である | 63.2% | 35.8% | 27.4pt |
| 副業の作業時間は自由に設定できる | 62.3% | 35.3% | 27.0pt |
いちばん差が大きかったのは、時間を区分できているかどうかでした。47.4ポイントの開きです。
副業実施者全体では、満足度が「向上した」と答えたのは46.9%です。時間管理ができている群だけを見れば68.9%まで上がります。

つまり、副業の満足度を決めるのは案件の中身ではなく、時間の線引きです。Step1〜4に手間をかける価値は、ここにもあります。
効果測定:3ヶ月ごとに見る4つの指標
始めたあとは、感覚ではなく数値で確認します。頻度は3ヶ月に1回で十分です。
定量で見る指標
| 指標 | 測り方 | 目安 |
|---|---|---|
| 年間総労働時間 | (所定+残業)×12+副業時間×12 | 前回より減っているか |
| 総合時給単価 | 合計年収 ÷ 年間総労働時間 | 前回より上がっているか |
| 月間の残業+副業 | 本業の残業+副業の稼働 | 45時間を超えていないか |
| 副業の単価 | 副業収入 ÷ 副業時間 | 相場(中央値2,083円)を上回っているか |
年収ではなく時給単価を主指標に置くのが要点です。年収が増えても単価が下がっているなら、それは時間を売っただけです。
定性で見る指標
| 指標 | 確認の仕方 |
|---|---|
| 体調 | 睡眠時間が6時間を切る日が週3日以上ないか |
| 家庭・プライベート | 家族や近しい人と過ごす時間が減っていないか |
| 本業の評価 | 直近の評価が下がっていないか |
| 学びの実感 | 副業で得たことを本業に持ち帰れているか |

定性の指標が1つでも崩れているなら、数値がよくても副業の量を落としてください。回復には、崩すのに要した時間の何倍もかかります。
まとめ:時間を生み出して副業を続ける5要点
最後に、本記事の要点を5つに整理します。
01 減ったのは意向であって、機会ではない
「将来的には副業をしてみたい」は27.6%まで下がりました。一方で、正社員の副業実施率は11.0%と過去最高、企業の副業容認率も64.3%で過去最高です。関心が薄い層が抜けただけで、やろうとする人にとっての環境はむしろ整っています。制度の壁を理由に挙げた人は12.0%にすぎません。
02 止めているのは、ほぼ時間
副業意向者が実施に至らない理由の上位は「本業が忙しく時間が無い」29.7%と「プライベートが忙しく時間が無い」20.9%でした。2020年に意向が50.6%まで上がったのは、テレワークで可処分時間が増えた時期だったからです。テレワーク実施率は14.5%まで戻りました。時間の問題を解かずに副業だけ足しても続きません。
03 年収ではなく時給単価で測る
年収1,000万円・月残業100時間の人の時給単価は3,205円です。年収900万円・残業ゼロなら4,688円になります。年収は下がっても単価は1.5倍です。判断を変えるのは、この1つの数値です。計算は5分で終わります。
04 削る・配る・変えるの順に試す
まず業務をなくす・自動化する・短くするで削り、次に上司と部下へ配分し直します。それでも動かないときだけ、転職で構造ごと入れ替えます。転職入職者の賃金は「増加」40.5%が「減少」29.4%を11.1ポイント上回りました。成果を出せている人にとって、転職は不利な選択ではありません。
05 続く形をつくってから始める
転職と副業を組み合わせると、合計年収は1,020万円と現状を上回ります。しかも年間総労働時間は3,120時間から2,160時間へ、960時間減ります。逆に削らずに足せば、月110時間の時間外という続かない形になります。時間を区分できている副業実施者の68.9%が生活満足度の向上を実感しており、全体の46.9%を大きく上回っています。
副業は、誰もがやるべきものではありません。自分の人生をどう設計するかは、他人が決めることではないからです。
ただ、「やりたいけれど時間がない」という理由だけで選択肢から外れているなら、それは副業の問題ではなく、時間の構造の問題です。そして時間の構造は、順番を踏めば変えられます。
筆者自身、かつては終電帰りが当たり前で、副業など考える隙もありませんでした。変わったのは、意志ではなく順番でした。
まずは、いまの年収を年間総労働時間で割ることから始めてみてください
よくある質問
減っているのは「意向」だけで、機会はむしろ増えています。日本生産性本部の第19回調査(2026年7月)では「将来的には行ってみたい」が27.6%と、2020年10月の40.6%から下がりました。一方でパーソル総合研究所の第四回調査(2025年8月)では、正社員の副業実施率が11.0%、企業の副業容認率が64.3%といずれも過去最高です。関心が薄く広がっていた層が抜け、実行できる条件がそろった層が残った構図といえます。制度が理由で始められない人は12.0%にすぎません。
副業案件を探すのは最後です。順番は、①年収を年間総労働時間で割って時給単価を出す、②本業の業務を「なくす・自動化する・短くする」で削る、③抱えている仕事を上司と部下へ配り直す、④それでも動かなければ転職で構造を入れ替える、⑤生まれた時間を高単価の副業に充てる、の5段階です。副業意向者が実施に至らない理由の上位は「本業が忙しく時間が無い」29.7%と「プライベートが忙しく時間が無い」20.9%でした。時間の問題を解かずに仕事だけ足すと、ほぼ続きません。
「年収 ÷ 年間総労働時間」で求めます。年間総労働時間は「(月間所定労働時間+月間残業時間)×12」です。所定を月160時間とすると、年収1,000万円・月残業100時間の人は年3,120時間で時給3,205円になります。年収900万円・残業ゼロなら年1,920時間で4,688円です。年収は100万円下がっても、単価は1,483円上がります。年収だけを見ていると、この差は絶対に見えません。付属のxlsxに試算表を収めていますので、ご自身の数値を入れて5分で確認してみてください。
統計上は、上がる人のほうが多くなっています。厚生労働省の令和6年「雇用動向調査」では、転職入職者の賃金は前職と比べ「増加」が40.5%、「変わらない」が28.4%、「減少」が29.4%でした。増加が減少を11.1ポイント上回っており、前年より増加が3.3ポイント上昇しています。30代・40代前半では45%前後が増加しました。ただし、これは成果を出せている方に当てはまりやすい傾向です。現職で評価されていない状態での転職は、時間ではなく業務適合の問題である可能性があるため、先に配置転換の相談をおすすめします。
まずは月10〜20時間から始め、3か月続けられるかを見てください。パーソル総合研究所の第四回調査では、1か月あたりの副業活動時間は平均23.0時間でした。上限の考え方としては、本業の残業と副業を合算して月45時間を超えないことを最初の警戒線に置きます。同調査では、本業の残業+副業が45時間を超える人が3割を超え、そのうち半数以上が本業先に副業を申告していないことが報告されており、過重労働は調査開始以降で最も高い水準にあります。時間の上限と、副業を一切やらない曜日は、始める前に決めておいてください。
3つの原則があります。第一に、本業の隣で始めること。いま持っているスキルの延長で受ければ学習コストがゼロになります。第二に、時間ではなく成果物で契約すること。時間契約は慣れて速くなるほど収入が減る仕組みですが、成果物契約なら習熟がそのまま単価上昇になります。第三に、提示を待たず、こちらから相場を伝えることです。副業の時給は平均3,617円・中央値2,083円で、平均と中央値が1.7倍離れています。単価の分布は上に大きく伸びており、交渉の余地は想像以上にあります。
隠して始めることを前提にしないでください。まず就業規則で、許可制か届出制か、禁止されている業種があるかを確認します。あわせて競業避止の範囲と秘密保持の条件も見ておきます。雇用契約による副業は本業と労働時間が通算されるため、申告しないと本業側が法定労働時間の管理をできなくなります。厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表しているので、始める前に一度目を通しておくと安心です。なお業務委託の副業でも、実態として指揮命令を受けていれば「労働者性」が問題になる場合があります。
その場合こそ、副業を足す前に本業を削る工程が効いてきます。育児・介護・治療といった動かせない予定があるなら、削れるのは本業側だけだからです。記事のStep2からStep4までを先に進め、余白が生まれてからStep5を検討してください。もし3か月試しても週あたりの労働時間が1分も減らないなら、それは個人の工夫では動かない構造です。副業ではなく、働き方の前提が変わる転職を先に検討したほうが、結果として早く楽になります。無理に副業を始める必要はまったくありません。
優先順位を決めるより、時間を明確に区分するほうが効果的です。兼業・副業に関する動向調査2024(副業実施者620名)では、「本業と副業・プライベートの時間を明確に区分し、時間管理ができている」群の68.9%が副業により生活全体の満足度が「向上した」と回答した一方、できていない群では21.5%にとどまりました。47.4ポイントの差です。副業実施者全体では46.9%ですから、時間管理ができている群だけが大きく上回っています。満足度を決めるのは案件の中身ではなく、時間の線引きだといえます。

