DXハイスクール推奨科目「情報II」を社会人データサイエンティストが読んでみた

キャリアアップ

現在あらゆる業界で、データサイエンススキルの重要度が高まっています。データ蓄積を試みている企業から更なるデータ活用による意思決定に踏み切ろうとしている企業など様々でしょう。またその重要度の高まりと同時に、企業ではデータサイエンティストのみならずマーケティング人材についてもそのスキルニーズが発生しているようにも感じます。

また一方、2024年度から「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」がスタートするにあたり、高校生からデータサイエンスの知識を身につけられる機会も増えていきます。

社会人のみならず高校生にとっても身近になりつつあるデータサイエンスについて、効果的な教材選びは不可欠です。今回は、DXハイスクール推奨科目である「情報II」の教材を社会人データサイエンティストの目でレビューし、その有用性を探ります。

本記事のターゲット

  • データサイエンティストになりたい高校生
  • データサイエンスの知見を持ち合わせてないが興味がある社会人

サマリー

1. データサイエンスの実践的知識の獲得

とっつきにくい機械学習の理論も簡潔にまとめられており、理解しやすい構成になっています。特に、データサイエンティストとして重要な機械学習の基本概念やアルゴリズムが明確に説明されており、初学者でも挫折しにくい内容となっています。

さらに、表計算ソフトを用いた実践問題も豊富に用意されており、小規模データの分析を現場で実践できるスキルを習得することも可能です。実際のビジネスシナリオを想定した問題も存在したりなど、データの収集、整理、分析、そして結果の可視化を意識した学習も期待できます。

リン
リン

条件付き確率や線形代数などの大学数学の表現が一部潜んでおり、少し苦戦することもあるかもしれませんが、要点を掴んだ解説で非常にわかりやすいです

2. データサイエンスの周辺知識の獲得

データサイエンスに関わる基本的なプログラミングや機械学習ライブラリについても、「情報II」で扱われています。PythonやJavaScript、Rなどの主要なプログラミング言語に加え、データベース言語(SQL等)を使ったサンプルコードが豊富に掲載されており、初心者でも手を動かしながら読み進めることができる構成になっています。これにより、自らWebサイトの情報を取得したり、大規模データにアクセスして機械学習を適用するなど解決できる問題の幅が広がります。

さらに、データ型や基本的な機械学習ライブラリの使い方などつまずきポイントに加え、プロジェクトマネジメントやバージョン管理も一部フォローする幅広さです。単なるプログラミングスキルだけでなく、プロジェクトの全体像を理解し、効率的に作業を進めるためのスキルも身につけることが期待できます。

イー太
イー太

高校で、Web APIやスクレイピングによる大規模データの取得方法を学ぶ機会があるなんて、ひと昔前では信じられないくらい高度な教育だね

3. ビジネス・エンジニアリング知識の獲得

データサイエンティストはデータサイエンススキルの充足のみではビジネスで活躍できません。データサイエンティスト協会の定めるスキルセット[3]では、「データサイエンス」「ビジネス力」「データエンジニアリング」を有するプロフェッショナルと定義されています。情報Ⅱでは「ビジネス力」「データエンジニアリング」に関わるマーケティング企画やシステム開発などのプロセスについてもざっくりと学ぶことができるため、ビジネスの意思決定やシステム構築に役立つ知見を得ることもできます。

例えば「ビジネス力」を培う上で、マーケティング企画プロセスを理解することは欠かせません。教材内では、問題の発見からメディアプランの検討、コンテンツの制作と改善に至るまで触れられており、マーケティング現場と伴走しながら価値を創出するイメージも湧きやすい内容になっています

リン
リン

実際のマーケティング現場では、プロセスを理解しても成果に直結させることは非常に難しい。データを活用し「人を動かす」上でのハードルを知る上では、ぜひ企業データサイエンティストとの接点を設けることが大切です

最後に

「情報II」教材は、データサイエンティストを目指す高校生の「大学の先取り」や、データサイエンスに興味のある社会人の「リスキリング」に非常に有用です。実践的な知識、周辺知識、ビジネス・エンジニアリング知識をバランス良く習得できるため、データサイエンスの第一歩を踏み出すための最適な教材と言えるでしょう。情報Ⅱの教員研修用教材は無料でアクセス可能であるため、データサイエンスに興味をもった方は、是非手に取ってみてください。

一部教材によっては、今回の内容を扱っていない場合があります

参考文献

[1] 「情報II(2024)」. 実教出版社. 萩原昌己

[2] 「高等学校情報科「情報Ⅱ」教員研修用教材(本編)」.文部科学省. 参考URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/mext_00742.html

[3] 「2023年度スキル定義委員会活動報告」. 一般社団法人 データサイエンティスト協会 スキル定義委員会. 参考URL:https://www.datascientist.or.jp/common/docs/10thsymp_skill.pdf

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