これまでデータサイエンスチームのリーダーとして4年、グループマネージャーとして1年を経て得た「リーダーシップ」「マネジメント」について自分の考え方をまとめようと思います。
リーダーシップとマネジメント。
この二つの言葉を一緒に語る書籍も多く目にします。しかし全く異なる概念です。
私は、リーダーシップは「メンバーとともに未来に向かって変化を楽しむこと」、マネジメントは「メンバーとともに現在の業務をより良く回すこと」と捉えています。
これらの両面を理解し、実行に移すことこそ、リーダーとして成功するための第一歩だと考えます。
今回は、私が数々の書籍や経験から築いた「リーダーシップ」「マネジメント」の方針を余すことなく発信することで、若手リーダーやマネージャー読者の皆様にとって支えとなる情報になれば嬉しいです。
本記事のターゲット
- 現場リーダー・マネージャーを任された若手社員
サマリー
リーダーシップ:「メンバーとともに未来に向かって変化を楽しむこと」
業務を行う上で利益を得ることも重要ですが、それ以上に大切なのは、メンバーを成長させ、チーム全体の成果を最大化することです。
それを実現するのが「リーダーシップ」です。
多くのリーダーが独自のスタンスを持ちメンバーの成長を促進していますが、私は大きく2つの観点が重要だと考えています。
1. 明確なルールを設定し「任せきる」
まず私の失敗談をお話しします。
定期獲得KPIを抱えるデジタルマーケティングチームのリーダーを任された時のことです。
デジタルマーケティングは、KPIを改善すべく「課題仮説立案→データ分析による机上検証→立証された課題に対応する施策立案→検証計画・コンテンツ制作・配信設定等」を経て施策が実施でき、成果を上げられます。
私は各工程におけるメンバーの動きに繊細になり、「できないなら私がやる!背中を見てろ!」というスタンスのもと、全てを自分で行なってしまったことがあります。
その結果得られたのは、「再現性の低い成果」と「部下からの信用失墜」でした。つまり私は目の前の成果のみを追い続けて、周囲が見えていなかったのです。
それ以降私は考え方を変えました。明確なルールを設定し、そのもとでメンバーに「任せきる」ことにしたのです。
ルールは簡単に2つ
「1. お客様に顔向けできるようとことん突き詰めよう」
「2. 進捗の報告を必ず毎週徹底しよう」
を設定し、各工程をメンバーに権限委譲したのです。その結果、メンバー自身が施策の成果に向き合い、チームメンバーを信じるようになりました。
2. 自分・部下を一人の「人」として見る
リーダーは自分の行動とその動機を客観的に見つめ、他者を「人」として見ることが大切です。
一方、やってはいけないことは「自己欺瞞の状態に陥り、部下を歪んだ視点で捉えてしまうこと」です。
その結果、部下を物や障害として扱い、パーソナリティを変えようと無理強いしてしまったり、ひどい場合には責任転嫁が伴ってしまいます。
書籍[2]でも触れられ私が気に入っている言葉に、「人を変えることはできない」という言葉があります。
相手の感情やニーズを理解する、つまりは「部下を人として見る」思いやりのある柔軟なコミュニケーションに自らを変え、時にその行動を振り返る。
その結果、健全な組織パフォーマンスを実現することができるのです。
リーダーは、自分の立ち位置を理解し、チーム全体の利益を最優先に考えることが重要です。目の前の成果だけに捉われず、未来の成長を見据えた行動が求められます。
私もリーダーを任された当初、目前の成果を追う余りメンバーを作業者として扱ってしまうシーンがありました。成果につながらない上、チームの心理状態も悪くなった苦い思い出です。。。
マネジメント:「メンバーとともに現在の業務をより良く回すこと」
ここまでメンバーの成長に向けたリーダーシップに係る話をしてきました。
一方、リーダーは目前のミッション・業務に対して効率的に成果を出すことも求められます。
それを実現するのが「マネジメント」です。
リーダーは成果を残すほど任されるメンバー数も増えていくことでしょう。そのためメンバーに対して適切なフィードバックを短時間で行うことが求められます。
1. 目標に対する行動を短時間で評価する
マネジメントを実施する際に留意すべきは、部下一人当たりに割ける時間が限られている前提を受け入れることです。
部下の立場に立っても効率的にフィードバックを行って欲しいと願っているはずです。
つまり、短時間で適切なフィードバックを行うことは双方にとってメリットになります。
フィードバックの形は大きく3つ
「目標」
「称賛」
「修正」
です。
具体的な目標を伝え、目標を達成すれば称賛し、達成できなければ修正をそれぞれ約1分程度で行います。
この場合に必ず留意すべきは、「行動を称賛・修正すること」「メンバーと1対1で実施すること」です。
前述したように「人を変えること」はできません。特に長らく人生を歩み培われたパーソナリティは容易に修正できるものではありません。また目標を達成するか否かを左右する要素は、パーソナリティではなく目標に対して適切な行動をしたかに依存します。
フィードバックを不特定多数の前で実施すると、他のメンバーの時間を搾取することに加え、その場の雰囲気を悪くする可能性があるため、定期的な1on1ミーティングを設定することをお勧めします。
2. SMARTな指標を設定・監視する
マネジメントの発明者として有名なP.F.ドラッカーは、「測定できないものは管理できない、目標はSMARTであるべき」と提唱しています。
Specific(明確な)・Measurable(測定できる)・Achievable(達成可能な)・Relevant(方針にあった)・Time-bound(時間に則した)を満たす指標を設定し、そのパフォーマンスを監視することが大事なのです。
パフォーマンス監視の対象は、部下だけでなく、隣接組織のアウトプットを含みます。リーダー・マネージャーの成果は自分の影響力が及ぶ組織のアウトプットとなるためです。
直属の部下について適切なフィードバックを提供しながらも、隣接組織がボトルネックを抱えている場合には調整を図ることも怠ってはいけません。
「月末までにXXX商品の営業活動をYYY件行う」などSMARTな目標設定は、部下も動きやすい上、監視もしやすいですね
最後に
リーダーシップとマネジメントは、どちらも重要なスキルです。
しかし、それぞれの役割を理解し、適切に実践することで、リーダー・マネージャーとして、チーム全体の成果を最大化することができます。
リーダーとして成長し続けるためには、常に自己を見つめ直し、学び続けることも大切です。
そんなあなたを見て、部下が意識を高く保ち自分自身をマネジメントできる、さらにはその下の部下達をマネジメントする喜びを覚えるよう導く種まきになることでしょう。
未来を見据えたリーダーシップと現在を管理するマネジメントをバランスよく取り入れ、次世代のリーダーとしての一歩を踏み出してください。
参考文献
[1] 「リーダーの仮面 いちプレーヤーからマネジャーに頭を切り替える思考法」. ダイヤモンド社. 安藤広大
[2] 「自分の小さな「箱」から脱出する方法」. 大和書房. アービンジャー・インスティチュート
[3] 「新1分間マネジャー 部下を成長させる3つの秘訣」. ダイヤモンド社. ケン・ブランチャード
[4]「HIGH OUTPUT MANAGEMENT 人を育て、成果を最大にするマネジメント」. 日経BP. アンドリュー・S・グローブ
[5]「スタンフォード式 最高のリーダーシップ」. サンマーク出版. スティーヴン・マーフィ重松