「来月はどんなコンテンツを作るべきか、根拠を持って説明できない」
「PVが高い記事を増やせば事業が伸びるはずなのに、数字がつながらない」
「ヒット作の偶発性に頼った運営から脱却したいが、計画の立て方が分からない」
——サブスク事業改善・事業成長の文脈でコンテンツに関わるほど、こうしたモヤモヤに直面します。
コンテンツは「作れば作るほど増える」一方で、何に投資すれば事業が伸びるのかが見えにくい領域です。
PVランキング上位を増産するだけでは、リーチは取れても継続・転換・LTVにはつながらない。逆に、地味でも定着に効くコンテンツは、ランキングでは埋もれがちです。
私は事業会社や副業先でデータサイエンス・マーケティングに携わりながら、コンテンツ戦略の立案に4象限分析を実際に使ってきました。
本記事では、この手法を「事業を改善・成長させるためのコンテンツ計画」にどう落とし込むかを、初心者にも分かるように整理します。
本記事のターゲット
- 事業改善・事業成長を目的に、コンテンツ制作の優先順位を決めたい方
- 「PV至上主義」から脱却し、事業KPIに効くコンテンツ計画を立てたい現場担当者の方
- 経営会議や部門会議で、コンテンツ投資の根拠を説明する必要がある方
- 大量の既存コンテンツの中から「次に何を作る/強化する/やめる」を選びたい方
なぜ「PVが高いものを増やす」だけでは事業は伸びないのか
最も単純なコンテンツ評価は「PVランキング」です。
広告枠を有するメディアの場合はPV数が売上然り事業の成長につながるため、視聴数・閲覧数が多い順に並べ、上位を増産しようという発想になりやすいです。
一見合理的に見えますが、サブスク事業成長の計画としては大きな落とし穴があります。
「PVが高いコンテンツ=ビジネスに貢献するコンテンツ」とは限りません。
SNSで一時的にバズったコンテンツはPVこそ高くても、視聴・閲覧後すぐに離脱されるケースがあります。逆に、地味にPVが少なくても、見た人が長期的に定着する「ロイヤルティ醸成型」のコンテンツも存在します。
つまり、PVだけを軸に計画を立てると、話題性はあるが収益・継続・転換に貢献しないコンテンツを量産することになりかねません。
事業改善の観点では、「リーチ力」と「定着・継続への貢献度」を別々の軸として見る必要があります。

4象限分析とは?── コンテンツ計画の「地図」を描く
4象限分析は、コンテンツを2つの異なる軸で評価し、4つの象限に分類する手法です。
私が実際に使っているのは「PV規模(リーチ力)× 継続率(定着貢献度)」の2軸です。
4象限分析の基本的な考え方
4象限分析の本質は、コンテンツを「良い/悪い」の一列に並べるのではなく、象限ごとに打ち手を変えることにあります。

同じ「改善」でも、Q1とQ3ではやるべきことがまったく違います。
| 象限 | 特徴 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| Q1 主力 | 継続率高 × PV高 | 増産—— 看板としてシリーズ追加・横展開し、投資を集中 |
| Q2 定着貢献 | 継続率高 × PV低 | 露出強化—— 新規制作は増やさず、掲載・レコメンドで発掘 |
| Q3 低効率 | 継続率低 × PV低 | 改善 or 撤退—— 制作計画から除外し、リソースを再配分 |
| Q4 話題先行 | 継続率低 × PV高 | 継続貢献への転換—— バズで終わらせず、視聴後導線を設計 |
「PVが高いから全部増やす」「数字が低いから全部やめる」
——こうした一律の方針が、事業成長の計画を歪めます。
Q1なら増産、Q2なら露出、Q3なら撤退検討、Q4なら転換
——象限ごとに推奨アクションが異なることを、分析の前提として共有しておくと、関係者への説明もスムーズになります。
PV単独ランキングが一次元の評価だったのに対し、2次元のマップを描くことで、「次に何を作るべきか」が立体的に見えてきます。
事業成長のためのコンテンツ制作計画:5ステップ(約1時間)
新シリーズの効果測定や、年次・四半期のコンテンツ戦略策定時に、以下のフローを実行しています。全体の所要時間は約1時間。最も時間がかかるのは「Step 5: 施策提言=計画への落とし込み」です。

Step 1: データ抽出(約10分)
評価対象コンテンツの一覧と、評価指標を抽出します。1コンテンツあたり、最低限以下を集めます。

| 指標カテゴリ | 例 |
|---|---|
| リーチ系 | PV、ユニーク視聴者数、視聴開始数 |
| エンゲージメント系 | 平均視聴時間、完了率、リピート率、直帰率 |
| ビジネス系 | 視聴者の継続率、課金転換率 |
公開後30日間の集計値で揃えるのが定番です。新旧コンテンツを公平に比較でき、計画の起点として使いやすくなります。
Step 2: 軸の定義(約15分)
評価軸を2つ選びます。分析の質を最も左右する工程です。
ポイントは「相関しない2軸を選ぶこと」です。

「PV」と「ユニーク視聴者数」は強く相関するため、2軸にしても全コンテンツが対角線上に並び、4象限に意味が出ません。
事業成長の計画に使う場合、私が採用しているのは以下の組み合わせです。
- 横軸: 視聴者の継続率(or 解約率)
- 縦軸: PV規模(リーチ力)
リーチ力(拡散性)とロイヤルティ醸成力(定着性)は意外と独立しており、4象限がきれいに分散します。サービスの事業モデルに応じて、横軸を「課金転換率」「リピート率」などに差し替えることも可能です。
Step 3: 閾値設定(約10分)
各軸を「高/低」に分ける閾値を決めます。

- 中央値で分ける: 全コンテンツの中央値で2分割。常に各象限に概ね半分ずつ入る
- 平均値で分ける: 全コンテンツの平均値を閾値にする。「平均より上か下か」は誰でもイメージしやすく、経営会議や部門会議で関係者に説明しやすい方法です。初めて4象限分析を導入するチームでは、まず平均値から始めるのも有効です
- 絶対値で分ける: 「PV 5万以上を高」「継続率90%以上を高」など、ビジネス的に意味のある閾値で分割
「相対的にどう位置づくか」を見たいなら中央値または平均値、「目標達成しているか」を見たいなら絶対値、と使い分けます。
計画の目的に合わせて選び、レポートには必ずどの閾値を使ったかを明記してください。
Step 4: 象限割当(約5分)
各コンテンツに象限ラベル(Q1〜Q4)を付与します。
あるサービスでの集計例は以下のとおりです。

| 象限 | 件数 | 件数構成比 | PV構成比 | 平均継続率 |
|---|---|---|---|---|
| Q1: 主力(継続率高×PV高) | 49本 | 15.3% | 17.7% | 91.15% |
| Q2: 定着貢献(継続率高×PV低) | 113本 | 35.2% | 23.9% | 91.72% |
| Q3: 低効率(継続率低×PV低) | 47本 | 14.6% | 11.0% | 89.85% |
| Q4: 話題先行(継続率低×PV高) | 112本 | 34.9% | 47.3% | 89.68% |
この時点で重要な発見が出てきます。
PV構成比の47%を占めるQ4(話題先行)コンテンツが、継続率では平均を下回っていることが分かります。PV至上主義だけで計画を立てていたら、知らないうちに継続率を下げる方向に投資していたことになります。
Step 5: 計画・施策提言(約30分)── 事業成長への落とし込み
各象限ごとに次の四半期・次の制作サイクルで何をするかを決めます。4象限分析の真骨頂はここです。

Q1(主力)への計画: 増産・横展開
- 同シリーズの追加コンテンツ制作を計画に組み込む
- 類似テーマ・類似フォーマットの横展開
- 看板コンテンツとしての露出強化(トップ掲載、広告、メール等)
Q2(定着貢献)への計画: 露出強化
- トップ画面・レコメンドへの掲載強化
- 「隠れた名作」としての特集・再編集
- 制作は増やさず、既存資産の活用で定着を底上げ(低コスト成長)
Q3(低効率)への計画: 改善 or 撤退判断
- なぜPVも継続率も低いのか深掘り
- 改善余地が見えなければ、新規制作計画から除外・統廃合
- 浮いたリソースをQ1・Q2へ再配分
Q4(話題先行)への計画: 継続貢献への転換
- 視聴後の導線改善(次に何を見せるか)
- 視聴後すぐ離脱する理由の深掘り
- バズだけで終わらせない構造づくり(シリーズ化、関連コンテンツへの誘導)

「全コンテンツに同じ施策」を1つだけ立てると、必ずどこかの象限には合いません。象限別に打ち手を分けて計画表に書くことで、事業成長に直結する制作ロードマップになります。
4象限分析後のコンテンツ制作イメージ例
分析が終わったら、象限ごとに次の四半期で何を作るかを具体化します。
以下は、動画コンテンツを例にした制作計画のイメージです(ブログ・SNSでも同じ考え方で置き換え可能です)。

Q1(主力)── 増産・横展開
| 既存コンテンツ | 分析結果 | 次の制作アクション |
|---|---|---|
| 「〇〇の基礎講座」第1弾 | PV上位・継続率92% | シリーズ第2・第3弾を制作(テーマを深掘り) |
| 「△△の実践ワーク」 | 継続率95%・PV構成比15% | 類似テーマの派生3本(ケーススタディ形式) |
→ 制作リソースの40〜50%をQ1に集中。「なぜ増やすか」はデータで説明できる。
Q2(定着貢献)── 露出強化(制作は増やさない)
| 既存コンテンツ | 分析結果 | 次の制作アクション |
|---|---|---|
| 「□□の入門ガイド」 | PVは下位だが継続率88% | 新規制作なし → トップ掲載・メルマガ特集に追加 |
| 「◇◇のチェックリスト」 | 埋もれているが解約防止に効く | レコメンド枠に常設、関連動画の終了画面にリンク |
→ 制作コストほぼゼロで、定着率の底上げが狙える象限。
Q3(低効率)── 改善 or 撤退
| 既存コンテンツ | 分析結果 | 次の制作アクション |
|---|---|---|
| 「古いバージョンの解説」 | PV・継続率ともに下位 | 新規制作計画から除外。リライト余地がなければ非公開 |
| 「ニッチすぎる特集」 | 制作工数に対し効果薄 | 類似テーマのQ1コンテンツに統合し、一本化 |
→ 浮いた工数をQ1・Q2へ再配分。「やめる判断」も計画の一部。
Q4(話題先行)── 継続貢献への転換
| 既存コンテンツ | 分析結果 | 次の制作アクション |
|---|---|---|
| 「話題の〇〇解説」 | PVは突出、継続率は平均以下 | 視聴後にQ1・Q2へ誘導する導線を設計(関連リスト・CTA追加) |
| 「バズったショート動画」 | リーチは取れたが転換弱い | フル版へのリンク、続きを見るためのシリーズ化を検討 |
→ 増産ではなく既存資産の改善が中心。うまく転換できれば、次期分析でQ4→Q1への移動を狙う。
四半期計画表への落とし込み(例)
【次期コンテンツ制作計画(4象限ベース)】
■ 新規制作(Q1向け): 基礎講座第2弾、実践ワーク派生×2 … 計5本
■ 露出強化(Q2向け): 入門ガイド・チェックリストの掲載変更 … 制作0本
■ 撤退・統合(Q3向け): 旧版解説の非公開、ニッチ特集の統合 … 新規0本
■ 導線改善(Q4向け): 話題解説3本の終了画面・関連記事改修 … 制作0本
このように、象限ごとに「作る/見せる/やめる/直す」が明確に分かれるのが、4象限分析後のコンテンツ計画の強みです。
事業改善・成長の観点で読み解く3つのポイント

「Q4の割合」が多いサービスは要注意
Q4(話題先行)が全体の30%を超えるサービスでは、リーチはあるのに継続率を引き上げきれていません。PVを稼ぐ施策と、継続率を引き上げる施策が分離している可能性が高く、コンテンツ計画とCRM・オンボーディングの連携不足を疑うシグナルになります。
Q2を「埋もれた宝」として計画に組み込む
Q2(定着貢献)は社内で軽視されがちですが、ここを発掘して露出強化することで、相対的に低コストで継続率を底上げできます。「PVランキング上位ばかり増産する」計画から脱却するきっかけになります。
時系列でマップを比較し、計画を更新する
四半期ごとに4象限マップを描き直すと、コンテンツの「象限移動」が見えてきます。「Q4から Q1に移動した」「Q2のままで埋もれている」といった動きから、施策の効果やコンテンツの賞味期限が読み取れ、次期計画の修正根拠になります。
まとめ:事業成長のためのコンテンツ計画の4原則
4象限分析というシンプルなフレームワークでも、PVランキング一本では見えなかった戦略課題が浮かび上がり、「何を作るべきか」の計画に直結します。
01 「2軸の独立性」を最優先する
4象限分析の成否は、ほぼ「軸選び」で決まります。相関の低い2軸を選ぶことで、コンテンツが4象限に分散し、事業成長の議論に意味が出てきます。
02 「件数構成比」と「重み構成比(PV等)」を両方見る
「件数の何%」と「PVの何%」では話が変わります。件数35%のQ4がPVの47%を占める、といったズレを見落とさないことが、計画の精度を上げます。
03 各象限への打ち手を別々に設計する
Q1には増産、Q2には露出強化、Q3には撤退検討、Q4には継続貢献への転換
──象限別の計画を用意することで、制作リソースが事業KPIに効く方向に配分されます。
04 時系列で象限移動を観測し、計画を更新する
1回切りの分析で終わらせず、四半期ごとに更新して「コンテンツがどの象限に移ったか」を追跡します。打ち手の効果検証と、次期計画の修正にそのまま使えます。
コンテンツ計画は「来月何本作るか」だけではありません。
既存資産を2軸で見極め、増産・強化・改善・撤退を象限別に決める
──4象限分析は、その意思決定をデータで支える実用的な型です。
ぜひご自身のサービスのコンテンツ一覧で「PV × 継続率」のマップを描いてみてください。
PVランキングだけ見ていた頃には気づかなかった、事業成長のための計画の盲点が、思いのほか多く見つかるはずです。
よくある質問
使えます。必要なのはExcelやスプレッドシートでコンテンツ一覧と指標(PV・継続率など)を並べ、2軸で高/低に分けて4つに仕分ける作業です。全体の所要時間は約1時間。象限割当までは機械的に進められ、本番は各象限への打ち手を考える部分です。統計の専門知識よりも「事業に何が効くか」を考える力のほうが重要です。
事業成長の計画としては不十分です。PVが高くても継続率・転換率が低い「話題先行(Q4)」コンテンツは、リーチは取れても事業KPIにはつながりにくいケースがあります。実例ではPV構成比の47%をQ4が占めていた一方、平均継続率は下回っていました。PVと定着貢献度を別軸で見ることで、投資先の盲点が見えてきます。
「相関しない2軸」を選ぶことが最優先です。PVとユニーク視聴者数のように本質的に同じ指標を2軸にすると、4象限に意味が出ません。事業成長の計画では「PV規模(リーチ力)× 継続率(定着貢献度)」の組み合わせが定番です。サービスに応じて横軸を課金転換率・解約率・リピート率などに差し替えることも可能です。
Q1(主力)は増産・横展開、Q2(定着貢献)は露出強化(制作を増やさず既存資産の活用)、Q3(低効率)は改善 or 新規計画からの除外・撤退、Q4(話題先行)は視聴後導線の改善で継続貢献への転換、が基本方針です。全コンテンツに同じ施策を当てはめるのではなく、象限別に計画表を分けて書くことが重要です。
Q2はPVこそ低いものの継続率が高い「埋もれた宝」です。新規制作を増やさず、トップ掲載・レコメンド・特集など露出を強化するだけで、相対的に低コストで定着率を底上げできます。PVランキング上位ばかり増産する計画から脱却し、事業改善に効くリソース配分を実現する象限です。
目的で使い分けます。平均値は「平均より上か下か」で分けられるため、初めて導入するチームや重要会議での説明に向いています。中央値は外れ値の影響を受けにくく相対位置を見たいとき、絶対値(例:PV5万以上・継続率90%以上)は目標達成の確認に有効です。閾値を変えると結論も変わるのは正常なので、計画書やレポートには必ず使用した閾値を明記してください。
いいえ。数値上は低効率でも、ブランドイメージ・法規対応・コンプライアンスなど定性的に重要なコンテンツがQ3に入ることがあります。「数値が低い=即撤退」ではなく、定性評価とセットで計画を判断してください。改善余地がなければ新規制作計画から除外し、浮いたリソースをQ1・Q2へ再配分するのが効果的です。
四半期ごとの更新がおすすめです。1回切りの分析で終わらせず、時系列でマップを比較すると「Q4からQ1に移動した」「Q2のままで埋もれている」といった象限移動が見え、施策の効果やコンテンツの賞味期限が読み取れます。次期の制作計画の修正根拠としてそのまま使えます。
使えます。動画・記事・SNS・メールなど媒体は問いません。リーチ系指標(PV・インプレッション等)とビジネス系指標(継続率・転換率・リピート率等)を2軸に選べば、同じ型で「次に何を作る・強化する・やめる」を計画できます。事業改善・事業成長を目的としたコンテンツポートフォリオの見直しに広く応用できます。
「件数構成比」と「PV構成比(重み)」を両方示すことが効果的です。件数35%の象限がPV47%を占める、といったズレは投資判断の盲点を可視化します。あわせて各象限への方針(増産・露出強化・撤退・転換)を計画表として提示すれば、「なぜこのコンテンツに投資するのか」をデータで説明できます。
「2軸が相関しすぎている」サインです。PVとユニーク視聴者数のように本質的に同じ指標を2軸にしていると、4象限に意味が出ません。Step 2の軸定義に戻り、リーチ系とビジネス系など独立した指標を選び直してください。
数値上は低効率でも、ブランドイメージ・法規対応・コンプライアンスなど定性的に重要なコンテンツがQ3に分類されることがあります。「数値が低い=即撤退」ではなく、定性評価とセットで計画を判断してください。維持が必要なものは計画書に理由を明記し、改善余地があるものだけ施策を検討するのがよいでしょう。
「中央値・平均値で切るか、PV5万で切るかで全然違う結果になる」と悩むケースですが、これは正常です。閾値は計画の目的によって変わって当然なので、必ず使用した閾値を計画書・レポートに明記してください。重要会議では「なぜこの閾値を選んだか」もあわせて説明すると、納得感が高まります。
