「地方企業の課題解決に支援したい」「副業で地方貢献しながら少し稼ぎも欲しい」という声を周りから多く聞かれるようになってきました。
一方で、「本当に自分でもできるんだろうか」「副業支援する際に必要なスキルがわからない」といった後ろ向きな相談を受けることもあります。
支援領域や求められるスキルを、副業マッチングサービス「Skill Shift」の合計3,366件の登録案件から傾向を分析してみましょう。本記事が地方副業に興味があるが一歩踏み出せない全ての方の背中を押すきっかけになれば幸いです。
本記事のターゲット
- 地方副業に興味があるが一歩踏み出せない方
- 地方副業の最新トレンドを知りたい方
データから見る案件とその内訳
案件数の推移
副業マッチングサービス「Skill Shift」には、2018年から2025年9月現在までに合計3,366件もの案件が登録されており、登録案件数は年々増加傾向にあります。2025年については、9月現在で548件と前年の2024年と肩を並べるペースで案件が発生しており、地方企業の副業ニーズが高まっていることがわかります。

案件数の内訳
増加している案件数ですが、どのような「必要スキル」「地域エリア」「業界」が多いのか、実際に見てみましょう。
必要スキル別集計
まず「必要スキル」から見てみます。年度により傾向にバラツキがあるものの、「マーケティング」「人事・組織開発」「広報・PR」はいずれの年度も比較的多い傾向にあります。一方で直近で微増しているのが「営業企画」「人事・組織開発」です。
実際に私が受け持っている案件も「マーケティング」「人事・組織開発」「広報・PR」について、まずオンライン売上や離職率を改善したい企業様が多く、その業績改善後に情報システムに手を入れる相談を受けることもまた多いです。

地域エリア別集計
次に「地域エリア」です。以前は中国地方が多かったようですが、直近5年は「中部」「九州・沖縄」「近畿」の占める割合が増加しています。運営会社である株式会社みらいワークスの支社や提携会社の担当エリアにも依存するため、全国傾向として読み解くのは難しいものの、都市圏エリアを中心に副業の裾野の広がりを感じます。
思い入れの強い地方への支援だけでなく、旅好きな方は顔合わせを兼ねて旅行ができる点も地方副業の魅力の一つです。

業界別集計
次に「業界」を見てみましょう。年度により傾向にバラツキがあるものの、「製造業」「サービス業」はいずれの年度も比較的多い傾向にあります。一方で直近で増えているのが「建設業」「その他」です。
「建設業」は、全国の中小企業数において第二位の業界(「2024年版中小企業白書」より)です。私の経験上、「企業数の規模に比してDX認定事業者が少ない」「地域との密着度が高く、職人気質も高い」傾向から、デジタル化で遅れをとっているように感じますが、変革が問われる業界であり、市場規模も大きいため、今後ニーズが高まっていくことは間違いありません。

月額報酬の実態
「月額報酬」の分布を見ると、「4万円未満」で全体の70%、「6万円未満」で全体の95%を占める構成になっています。これはあくまで契約開始時に提示されている報酬額のため、稼働の量・質に応じて変わる可能性があります。
安定的に月額10万円ほどの収入を期待する場合には、2〜3件を並行して扱う想定でいた方が良いでしょう。これは地方企業の予算規模や、副業という働き方の性質を考慮すると妥当な水準といえます。重要なのは、単発の高額案件を狙うよりも、継続的な関係性を築きながら複数の企業と長期的にお付き合いしていくことです。

報酬額を左右するポイント
地方副業を始めるきっかけは人それぞれですが、一定の「収入を得たい」という思いがあるのは当然のことです。では、どのような案件の報酬が高く設定されているのでしょうか。ここでは機械学習による分析で考察してみます。
「必要スキル」「地域エリア」「業界」をもとに「報酬額」を予測した回帰木を作成しました。R2スコアが非常に低く精度が低いことから、これら「必要スキル」「地域エリア」「業界」だけでは報酬額をうまく説明できないという結果となりました。

関西エリアで「水産・農林業」「人事・組織開発」の案件において多少高くなる傾向が見られるものの、業界・スキルによる報酬額の明確な違いはないといえます。
報酬額は業界や必要スキルよりも、むしろ企業の経営状況、プロジェクトの緊急度、経営者との相性、提供する価値の明確さなど、より個別具体的な要素に左右されることが示唆されます。
まとめ
データ分析から見えてきた地方副業の実態を踏まえ、成功のポイントを整理してみましょう。
汎用性の高いスキルを磨く
「マーケティング」「人事・組織開発」「広報・PR」といった需要の高い領域は、特定の業界に特化した専門技術というよりは、ビジネス全般に活用できる汎用的なスキルです。マーケティング・PRや人事を一回でも日常業務で扱ったことがあれば「自分には特別なスキルがない」と考えている方でも十分に活躍できる可能性があります。
複数案件の並行管理を前提とする
地方副業の単価は、全体の95%が1件あたり月額6万円未満であるとともに、企業の経営状況等の個別事象に依存する単価設定になっています。そのため、安定した副業収入を得るためには2〜3件の案件を同時並行で進めることが現実的です。
成長業界を見定める
「製造業」「サービス業」などDX化が進みやすい業界にこれまで焦点が当たっていましたが、「建設業」をはじめとした従来型産業のDX化ニーズが急拡大しています。これらの業界では、デジタル化の遅れが課題となっている一方で、変革への意欲も高く成功事例も生まれつつあることから、副業人材が「建築業」に価値提供できる余地が十分にあります。
ぜひ興味を持った方は以下の記事も参考に、案件に応募してみてください。
参考文献
- [1] Skill Shift https://www.skill-shift.com/
- [2] 2024年中小企業白書. 中小企業庁https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/PDF/chusho/07Hakusyo_fuzokutoukei_web.pdf