データサイエンティストには、「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」のバランスが求められます。しかし、研究畑からの転身者にとってはビジネス力の獲得がハードルとなることも少なくないです。
私も「本質的な課題を見出し、構造化・深掘りができる能力」の獲得を通じて、現場での活躍の幅を広げるきっかけを作ることができましたし、データサイエンティスト協会の掲げるスキルチェックリストにも記載があります。
今回は、その中でも重宝している「データ分析に欠かせない推論法」にフォーカスして、幅広い読者の活躍の一助になればと思いお届けします
本記事のターゲット
- 事業現場と活動するデータサイエンティスト
- データサイエンティスト初心者
サマリー
推論とは
推論とは、与えられた情報や前提から、新しい情報や結論を導く思考プロセスになります。 目前の事象から法則を得たり、法則を当てはめ結果や背景事象を導くことに役立ち、「帰納法」「演繹法」「アブダクション」が主に用いられます
帰納法
帰納法とは、複数事象から共通点を見つけて法則を導く推論法です。
以下が例になります
- 事象A:新商品aをローンチすると、売上が上がった
- 事象B:新商品bをローンチすると、売上が上がった
- 事象C:新商品cをローンチすると、売上が上がった
これら3つの事象の共通点から、以下の法則を導くことができます
- 法則:「新商品をローンチすると、売上が上がる」
帰納法を使いこなす上では、まず「複数事象の蓄積」が大事です。なぜなら複数の事象が手元にない状態では、法則を導くことができないためです。 現場での「お客様を知る上でのアンケートやインタビュー調査」「複数事業でのキャリアや施策経験」、「自己研鑽としての読書」なども事象を蓄積する上で有効な手段だといえます。
そしてもう一点が「抽象化の実践」です。 帰納法は、まさに具体から抽象を導くアプローチともいえます。
よく新社会人の方で、本意を汲んで業務を行えないと嘆くことがありますが、業務経験が少ないため当然です。 これは「複数事象の蓄積」として「コミュニケーションを取る」「自ら情報収集する時間確保」、「抽象化の実践」として振り返りや1on1が有効だとも言えます
演繹法
演繹法とは、事象に法則を当てはめて、結果を導く推論法です。
以下が例になります。
- 事象D:新商品dをローンチすると顧客単価が上がる
- 法則:顧客単価が上がると、売上が上がる
この事象に対して、合致する一般的な法則を当てはまると以下の結果を導くことができます
- 結果:「新商品dをローンチすると、売上が上がるはずだ」
演繹法を使いこなす上では、「法則の蓄積」が大事です。特に「利用頻度の多いビジネスフレームワーク」と「KPIツリー(因数分解)」の習得を推奨します。
3C分析
4P分析
4C分析
QCD
SWOT分析
KPIツリー(因数分解)
あ
アブダクション
アブダクションとは、結果に法則を当てはめ、背景事象を導く推論法です。まさに結果を目的変数、背景事象を説明変数に置き換えると機械学習のプロセスに類似していることがわかるかと思います。
以下が例になります。
- 結果:売上が上がった
- 法則:購入者数が増加すれば、売上が上がる
この結果に対して、想定される法則を当てはまると以下の結果を導くことができます
- 背景事象:「売上が上がったのは、購入者が増加したからに違いない」
アブダクションはビジネスフレームワークを習得することも重要である一方、「なぜなぜ分析」「構造化(MECE)」が重要になります