「チームのモチベーションが上がらない」「アルバイトスタッフの主体性を引き出せない」——そんな悩みを抱えるリーダーやマネージャーは少なくありません。
実は、リーダーシップは生まれ持った才能ではなく、誰でも学び実践できる「仕事」です。マネジメントの父ピーター・ドラッカーも「リーダーシップは資質ではなく仕事である」と述べています。
その最高の実例が、ディズニーランドです。
スタッフの9割がアルバイトでありながら、世界最高水準のホスピタリティを提供し続けるディズニー。その秘訣は、個人の才能に頼らず、誰もが活躍できる「仕組み」と「文化」にあります。
本記事では、ディズニーのリーダーシップ・マネジメント手法を、あなたの組織でも実践できる3つの原則にまとめました。アルバイト中心の組織を運営する経営者や、チームの主体性を引き出したいリーダーにとって、明日から使える実践的なノウハウをお届けします。
本記事のターゲット
- チームのモチベーションを高めたいリーダー・マネージャー
- アルバイトやパート中心の組織を運営する経営者
- メンバーの主体性を引き出したい方
- サービス業・接客業に従事する方
ディズニーから学ぶ『3つのリーダーシップ原則』
ディズニーランドでは、リーダーもアルバイトが担当することがあります。一見すると組織運営が困難に思える環境ですが、ディズニーは世界最高水準のゲスト体験を提供し続けています。
なぜそれが可能なのか?
その秘訣は、「個人のモチベーションや才能に頼らず、誰もが一定の成果を出せる仕組みを整えている」ことにあります。
ディズニーのリーダーシップとマネジメントの仕組みを、3つの実践的な原則にまとめました。この原則は、規模や業種を問わず、すべての組織に応用できます。
原則① ミッション・行動基準を浸透させる
組織のミッションは、メンバー全員が共有する「働く目的」であり「最終的な理想像」です。
ディズニーのミッションは、「すべてのゲストにハピネスを提供する」。このシンプルで力強いメッセージが、すべての判断と行動の軸になっています。
さらにディズニーには、優先順位を反映した明確な行動基準「SCSE」(2021年以降はInclusionが加わりSCISE)があります。
- Safety(安全性):安全を最優先する。危険な状態を見たら、すぐに対応
- Courtesy(礼儀正しさ):すべてのゲストをVIPとして扱う。笑顔、挨拶、アイコンタクト
- Show(ショー):身だしなみを整え、私的なことを仕事に持ち込まない
- Efficiency(効率):チームワークを大切にし、ムダを省く
- Inclusion(多様性):さまざまな考え方や多様な人々を歓迎し、尊重する

明確なミッションと行動基準があることで、次の3つのメリットが生まれます。
- 自律的な判断ができる:上司の指示を待たずとも、ミッションに照らして行動できる
- 一体感が生まれる:バラバラの個人が同じ方向を向いたチームになる
- モチベーションが維持される:精神的な豊かさを感じながら働ける
例えば「効率を上げたいが、お客様の安全性が損なわれる」という状況では、SCSEの優先順位に従って必ず安全性を優先する判断が可能になります。
ウォルト・ディズニーの言葉「He lives in you(答えはあなたの中にある)」の通り、行動基準があれば、誰もが自信を持って行動できるのです。
あなたの組織での実践方法
Step1:ミッション・行動基準を言語化する
- 創業ストーリーをヒアリングする:経営者や創業メンバーから、「なぜこの会社を始めたのか」を聞き出す
- 400~500字程度にまとめる:長すぎず、短すぎない、記憶に残る長さに
- キーメッセージを見つける:エッセンスを一言で表現できる言葉を探す
- メンバーが共感できる内容に仕上げる:押し付けではなく、心から納得できる表現に
Step2:あらゆる機会で伝え続ける
- 朝礼・ミーティングで繰り返し言及する:「今日のこの判断は、〇〇というミッションに基づいています」
- 新人研修の中核に据える:最初の1時間は必ずミッションの理解に充てる
- 意思決定の場面で常に立ち返る:「この選択は、ミッションに沿っているか?」を問い続ける
原則② 心に炎を灯すコミュニケーション – 管理ではなく支援
ディズニーのリーダーの役割は、チームを「管理・統制」することではありません。メンバーの心に炎を灯し、自発的に動きやすい環境を整えることです。
そのために重視すべきコミュニケーションの3原則があります:
- 相手をワクワクさせる:管理者の視点ではなく、夢を語る
- まず信じる:「人はいつでも最善を尽くしている」という前提に立つ
- 聴くことから始める:話すより聴く量を増やす

身近な従業員でさえワクワクさせられないリーダーが、お客様を満足させることはできません。従業員を信じ、傾聴し、同じ夢に向かって走る——そんなコミュニケーションが、組織の力を最大化します。
あなたの組織での実践方法
STEP1. 日常のコミュニケーション習慣
- 1日1回、仕事以外の話をする:趣味、家族、週末の予定など、人間関係の土台を作る
- 「ありがとう」を増やす:「すみません」を「ありがとう」に変えるだけで、ポジティブな空気が生まれる
- 小さな成功体験を積ませる:「できそうな目標設定」→「達成」→「承認」のサイクルを回す
STEP2. 効果的な1on1ミーティングの5ステップ
- 話したいことをすべて話させる:まずは相手の話を遮らずに聴く
- 相手の話にリアクションする:うなずき、相槌、表情で「聴いている」ことを伝える
- 相手の言いたそうなことを言葉にして返す:「つまり〇〇ということ?」と確認する
- 次の行動を具体化する:「何を、いつまでに」を明確にする
- 相手の行動をほめる:小さな一歩でも必ず承認する
原則③ しくみで機能させる – 属人性を排除したマニュアル文化
ディズニーは「誰がやっても一定の成果が出る」仕組みを徹底的に作り込んでいます。
その結果、
- 新人が3日間の研修で独り立ちできる
- 9割がアルバイトでも世界最高水準のサービスを提供できる
- リーダーが変わっても組織文化が維持される
個人の才能やモチベーションに依存しない仕組みこそが、持続可能な組織の秘訣です。
現場を機能的にするマニュアルの5つの条件は以下になります。
- 一連の動きになっている:順番と手順が明確
- 具体的な行動を示す:曖昧な表現を排除
- 結果が明確:何ができたら完了かがわかる
- シンプルで短い:必要最小限の情報に絞る
- 覚えやすい:語呂合わせや頭文字など工夫する

あなたの組織での実践方法
Step1:マニュアル作成プロジェクトの立ち上げ
- 全社でプロジェクトチームを作る:現場の声を反映させるため、多様なメンバーを集める
- 「必ずやること」と「やってほしくないこと」を洗い出す:ポジティブ・ネガティブ両面を明確に
- 新入社員ができるかを基準に精度を確認する:「分かる人には分かる」では意味がない
- 写真で「Good show」と「Bad show」を明示する:視覚的に正解・不正解を示す
- オンラインで誰でも見られる状態にする:必要な時にすぐアクセスできる環境を作る
- 定期的にアップデートする:「生きたマニュアル」として進化させ続ける
Step2:効果的な教育の5ステップ
- 一連の行動を教える:全体像と流れを理解させる
- 仕事の目的を一つひとつ教える:「なぜそうするのか」の意味を伝える
- エピソードを伝える:臨場感のある具体例で記憶に残す
- 反復練習させる:完璧にできるまで繰り返す
- チェックリストで振り返る:次のアクションを明確にする
マニュアルは「自由を奪うもの」ではなく、「誰もが自信を持って動けるようにする道具」です。基準があるからこそ、安心して創意工夫ができるのです。
まとめ
本記事では、ディズニーのリーダーシップとマネジメントから学ぶ3つの原則を解説しました。
- ミッション・行動基準を浸透させる:全員が同じ方向を向く「軸」を作る
- 心に炎を灯すコミュニケーション:管理ではなく、信じて支援する
- しくみで機能させる:誰もが活躍できる「型」を整える
ディズニーの本質は、特別な才能を持った人材を集めることではありません。どんな人も活躍できる仕組みと文化を作り、個人のモチベーションに頼らず、誰もが一定の成果を出せる環境を整えることで、持続可能な組織を実現しているのです。
本記事をお読みいただき、実践したいと思われた方も多いでしょう。重要なのは、これらの原則を一度に完璧に実装しようとしないことです。
良いことも一度に沢山行いすぎると、担当者も現場にもストレスがかかります。まずは一つの原則から始めてください。小さな成功体験を積み重ねながら、徐々に組織文化として定着させていくことをお勧めします。
参考文献
- 今井千尋『ディズニーランド& ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで学んだ 新しいリーダーの教科書』
- 渡邊喜一郎『ディズニー こころをつかむ9つの秘密』
- 大住力『どんな人も活躍できる ディズニーのしくみ大全』
- 福島文二郎『9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方』(中経の文庫)
- 櫻井恵里子『「一緒に働きたい」と思われる 心くばりの魔法 ~ディズニーの元人材トレーナー50の教え~』
- 馬場康夫『新装版「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た日』(講談社+α文庫)
- ピーター・F・ドラッカー『マネジメント ― 基本と原則』(ダイヤモンド社)
